2001 年4月25日
日本鉛筆工業協同組合
鉛筆生産時のおが屑を資源として有効利用。
鉛筆木軸材料、吸音材、クッション材、ネコ砂の商品化実用実験に成功
   日本鉛筆工業協同組合(理事長:数原英一郎 所在地:荒川区西日暮里2-30-6、電話03-3891-6161)は、鉛筆生産段階で発生する木質系廃棄物(おが屑)を処分せずに再加工し、生分解性樹脂と混合することで、樹脂等と同様に「型」や押出し成型機によってほぼ最終形状に近い素形材を形づくる「類似の木質」の製造法の実用化に一定の成果を得て、複数の商品サンプルをこの程完成させました。
   組合は、実験段階ながら我が国の鉛筆(木工)工場が「ゼロ・エミッション工場」に到達できる可能性を示唆しました。
   本事業は、「全国中小企業団体中央会」から社会要請対応円滑化支援事業の補助金1,830万円の助成を受けて平成12年度に実施したものです。
   商品サンプルは(1)鉛筆木軸材料に利用するスラット、(2)吸音ルーバー及び壁の吸音副資材、(3) 畳芯向けのクッション材、(4) ネコのトイレ用の敷き砂、以上の4種=下写真=。
   これら商品サンプルをもって、木質系廃棄物を副産物として循環利用する産業ニーズの掘り起こしを図っていきます。
   本事業の呼称は「鉛筆製造時に発生するおが屑の再利用・再商品化の研究」で、事業期間は平成12年9月から13年2月でした。
本事業の背景と経緯は次の通り。
鉛筆工業は東京都の地場産業に指定され、都内に多くの中小工場がある。当該事業の主たる対象工場は、廃棄物排出量の多い首都圏立地の「木工工場」。
木工工場はスラットと呼ぶ北米産インセンスシダー(ヒノキ科の針葉樹)を資材に成軸加工を主とする。材料の歩留まり率は60%で、40%が細かい木質系廃棄物(おが屑)になる。
各工場は平成10年以前は工場内の焼却炉でこれらを処分したり、近隣の公衆浴場などに供給する形で処理していたが、「煙=ダイオキシン」の批判が高まる中、近隣住民を意識して10年を境に焼却炉の使用を停止した。
処理停止に伴って、あふれだしたおが屑の容積を圧縮・削減することと、工場外に搬出するため、これを廃棄物固形燃料(Refuse Derived Fuel:RDF)化する設備を3工場が10年度内に導入した(東京都地場産業等構造高度化対策事業助成による)。直後の11年7月、「ダイオキシン類対策特別措置法」が施行され、首都圏の鉛筆木工事業者はおが屑を工場内で焼却処分するという選択肢を失った。
「RDF化」したおが屑(写真A)の有価材としての再利用の研究に入った(以降、本事業)。背景にRDF化実現の報道を得て、利用希望の打診が多数組合に入ったことがある
粉体素材としての汎用性を広げるため、鉛筆副産物を一定のメッシュに分類する粉砕機を開発した。
粉を固化するための樹脂の検討に入った。ポリプロピリン樹脂との混合によってウッドデッキ等の屋外で使用する木質系建材の生産に成功した。しかし、組合は「本質的にはポリプロピレンは非生分解の樹脂であることから、この点に十分な配慮が必要だ」との結論に達し、環境負荷の少ない生分解性樹脂のリサーチに入った。
とうもろこしから作る天然物利用系修飾デンプン(日本コーンスターチ㈱)が鉛筆副産物と親和性があることをみつけ、これを混合する実験用ミキサーを開発、製法実験を行った。
商品化のサンプルとして、鉛筆木軸材料、吸音材、クッション材、ネコ砂を製造した。これらの商品アイテムは、経済産業省が示す環境・資源循環型経済システムに資する点で選定した。
これらを通じて組合は、実用実験段階ではあるが我が国の鉛筆(木工)工場が「ゼロ・エミッション工場」に到達できる可能性を示唆した。
鉛筆木軸材料に利用するスラット 吸音ルーバー及び壁の吸音副資材 畳芯向けのクッション材
ネコのトイレ用の敷き砂 (A)おが屑を固めた鉛筆ブリケット

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